春。農業のいとなみをこう言います。
春耕(しゅんこう)。

残雪の山々を背景に抱いて、丘丘の稜線を。
年季のはいったトラクターたちが、いま地中から目覚めた生き物のように。

ところ忙しと、まるでアートのように動き回るさまは、
びえいの、本当の姿。
商業化されない、おおむかし元来の美しさです。

ザワザワ村のアスパラ畑にもきょう、春が来ました。

アスパラガスは播種から収穫までに3年。
この株で、丹精して7年目のものになります。

俗に料理といふものは。
さいごの調味やアッセンブリーをさして呼ぶ人がほとんどですけれど。
ほんとうは、3年も前から土の労働とともに始まっているのです。

パンもスイーツもお料理も。
おいしいのは、人がきびしく、はたらいているからです。
それを知らない、ひとりよがりのパンや料理はただのカロリーです。